俳優佐藤輝のスペイン紀行 『ラ・マンチャの男』サンチョの『ドン・キホーテ』ガイド-4 グラナダ、コルドバ

スペイン紀行
サンチョの『ドン・キホーテ』ガイド-4
  

あそびごころの 佐藤 輝の世界
1995年からミュージカル『ラ・マンチャの男』のサンチョ・パンサを
484回演じている俳優・佐藤 輝が案内する心の旅。
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 サンチョのスペイン旅行記『ラ・マンチャ ガイド』 | ミュージカル『ラ・マンチャの男』出演記録


                       文 / 写真 佐藤 輝

 (1)マドリー(マドリード MADRID)

 (2)エスキビアス(Esquivias) エル・トボソ(El Toboso)
  カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)


 (3)カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)
  アルガマシージャ・デ・アルバ(Argamasilla de Alba)
  グラナダ(Granada)


 (4)グラナダ(Granada) コルドバ(Cordoba)

 (5)バルデペーニャス(Valdepenas) アルマグロ(Almagro)
  プエルト・ラピセ(Puerto Lapice)

 (6)コンスエグラ(Consuegra) トレド(Toledo)

 (7)バルセロナ(Barcelona)
(セビージャ Sevilla)




(4) グラナダ(Granada)
コルドバ(Cordoba)
 
 ラ・マンチャから、南のグラナダ(Granada)をめざす。
 途中ラ・マンチャ地方とアンダルシア地方を分ける急峻なシェラ・モレナ山脈越えをしてカンポ・デ・クリプターナから320km。夕方になってグラナダ、アランブラ宮殿(アルハンブラ宮殿 Palacio de la Alhambra 注 : スペイン語ではhを発音しないのでAlhambraは「アランブラ」と発音します)近くのホテルに着いた。


 直ぐにホテルを出て、宮殿の北西側の丘、アルバイシン地区に走った。太陽よ沈まないでくれと念じながら、小石のでこぼこ舗装で歩きにくい迷路のような細い坂道を息を切らせてサン・ニコラス教会を目指して登る。夕陽を浴びて赤く染まったアランブラ宮殿を見るためだ。




サン・ニコラス教会前の広場から、夕暮れのアランブラ宮殿を望む。



 白く雪をかぶったシェラ・ネバダ山脈を背後に従えて「赤い城」アランブラは夕陽に映えて更に赤く、あっという間に沈む夕陽の残照を受けながら美しくたそがれた次の瞬間、ふたたび夜間照明に浮き上がった。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 グラナダ アルハンブラ宮殿
ライトアップされたアランブラ宮殿。(注 : 夕方から夜間にかけて、アルバイシン地区への単独立ち入りは危険といわれる)



     
アルバイシン地区にあるヒターノ(ジプシー)のタブラオ(フラメンコ・ショーをする店)Zambra Gitana La Rocioでフラメンコを楽しむ。



 翌朝8時半の入場予約時間に間に合うように、快晴の空に白く息を吐きながらアランブラ(アルハンブラ)宮殿のチケットセンターにむかう。


 8世紀初頭から始まったムーア人流入以降、グラナダにはイスラムの砦が築かれ、その後、キリスト教徒による国土回復運動(レコンキスタ)によって1031年にコルドバを追われた一統が、その砦を拠点にして1238年にナスル王朝を開き、ここに王宮を造営したのがアランブラ宮殿の始まり、といわれる。そして1492年キリスト教王・女王イサベルによる国土回復運動の終結によって、イスラム教最後の王ボアブディルが城を捨てて北アフリカへ逃れるまで、イスラム王国最後の拠点として栄えた。



俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 グラナダ、アルハンブラ宮殿 ライオンのパティオ
アランブラ宮殿、ライオンのパティオ(中庭)。この庭を中心にした区域がイスラム王のハーレム。



 アランブラ宮殿はイベリア半島に花開いたイスラム文化絶頂期の華麗なあだ花だ。
 一歩足を踏み入れた宮殿は精緻な装飾に彩られた幻想の世界。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ・パンサ アルハンブラ宮殿
ライオンのパティオの北側にある二姉妹の間のドーム天井。見事に精緻な鍾乳石飾り(モカラベ)だ。



 水と星と緑の植物をモチーフに、過剰なまでの幾何学模様とアラベスク模様が包んでいる。細かなモザイク模様に心地よい目まいを感じる。想像を絶する精密さに驚いた。



俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 グラナダ、アルハンブラ宮殿
アラヤネス(天人花)の中庭。緑の植え込みがアラヤネス。後方は大使の間。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ・パンサ アルハンブラ宮殿
ライオンのパティオに面して東側にある「王の間」の天井画。10人のイスラム王の姿が色あざやかに描かれている。



俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ・パンサ グラナダ、アルハンブラ宮殿
アランブラ宮殿からヘネラリーフェ(夏の離宮)に向かう途中にある小さな砦のような建物内部。窓から見えるのはヘネラリーフェ。



 そして、砂漠の民があこがれた水の流れと水音、水のきらめき。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 グラナダ、アルハンブラ宮殿 ヘネラリーフェ
ヘネラリーフェ、アセキア(水路)の中庭。



 宮殿から見るアルバイシンの丘に広がる町もモザイク模様に見える。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 グラナダ、アルバイシン アランブラ宮殿から眺めるアルバイシンの丘。右寄り奥に見える白い塔がサン・ニコラス教会。その右上がサクロモンテの丘。



 スペイン料理の代表、黄金色のパエジャ(パエリヤ Paella)。
 あの色をつけるサフランも米も、砂糖やアーモンドもイスラムによってもたらされた文化だ。また、日本人がイメージする黒髪、黒い瞳、肌の浅黒いスペイン人の容貌もムーア人との混血によって生まれたと言われる。イスラム抜きでスペインは語れない。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 パエジャ(パエリヤ)
これはもちろんパエジャ(パエリヤ)。



 オリーブ畑や丘の上の白い村を眺めながらN-432を北西に160kmのコルドバ(Cordoba)を目指す。ラ・マンチャ地方と違って丘の所々に薄い緑が見える。


 コルドバは756年から1031年までイスラム王国の首都として栄え、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教が共存したヨーロッパの文化の中心地だった。
 コルドバの代表は何と言ってもメスキータ、つまりイスラム教のモスク。
 青空に向かってすっくと建つ鐘楼を仰ぎ見ながら大きな門をくぐると鮮やかな色の実をつけたオレンジが整然と植えられたオレンジのパティオ。この庭を横切って寺院に入る。



     俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 コルドバ、メスキータ
メスキータの「オレンジのパティオ」から見上げるミナレット。



 ここは薄暗やみの迷路。854本の大理石の柱の森に迷い込んだ錯覚におちいる。柱をつなぐ赤と白のアーチが連続しリズムのある流れを作っている。



 ええっ!?っと息をのむのは、広いアラブ模様の堂内のど真ん中を区切って鎮座しているキリスト教の祭壇。黄金に輝いてその存在を誇示しているように見える。
 厳しい民族対立、宗教戦争の歴史を見せられて立ちすくんだ。
 聞けば、ここには初めローマの神殿が建てられ、次にこれを壊してキリスト教会、今度はそれを壊してモスク、そして国土を奪回したキリスト教がその中に、と言う歴史だと言う。スペインは、日本人の感覚ではとても想像出来ない複雑な歴史を持った国なのだとあらためて知らされた。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ コルドバ、メスキータ
イスラムの赤白アーチの柱の森を区切って鎮座しているキリスト教の祭壇。



 そのメスキータからグアダルキビール川沿いに400mほど上るとポトロ広場に出る。可愛いポトロ(仔馬)の像が付いた噴水がある。



     俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ コルドバ、ポトロ広場
ポトロ広場。ポトロ(仔馬)の像が付いた噴水がある。



 この広場に面してセルバンテスが泊まった旅籠ポサーダ・デル・ポトロ、『ドン・キホーテ』に登場する旅籠屋ポトロだ。当時このあたりは泥棒やスリの巣窟だったらしい。安全のために1階は馬小屋、寝室は2階になっている。サンチョ・パンサが一緒だったら「こんな所は駄目だ」と引き止めただろうな。



俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ コルドバ、セルバンテスが泊まった旅籠屋ポトロ
旅籠屋ポトロの庭で、観光案内所の職員と。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ アンダルシアのガスパチョ 冷たいトマトスープ「ガスパチョ・アンダルース」とサングリアはアンダルシアの味。



 コルドバから再びラ・マンチャへ向かうA-4。今はむき出しの乾いた大地だが、以前5月の末に通った時はひまわりの盛りで見渡す限りの丘すべてが黄緑色の海のうねりのように見えた。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ アンダルシア、コルドバ近郊のひまわり畑 高速道路を走っていると、黄色い畑が見える。最初は菜の花畑かと思ったが、アンダルシアのひまわり畑。





 (1)マドリー(マドリード MADRID)

 (2)エスキビアス(Esquivias) エル・トボソ(El Toboso)
  カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)


 (3)カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)
  アルガマシージャ・デ・アルバ(Argamasilla de Alba)
 
 グラナダ(Granada)

 (4)グラナダ(Granada) コルドバ(Cordoba)

 (5)バルデペーニャス(Valdepenas) アルマグロ(Almagro)
  プエルト・ラピセ(Puerto Lapice)

 (6)コンスエグラ(Consuegra) トレド(Toledo)

 (7)バルセロナ(Barcelona) (セビージャ Sevilla)



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