『子午線の祀り』佐藤輝 出演記録


木下順二 作『子午線の祀り』出演記録

       
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義経、伊勢三郎の足跡をたどる      
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木下順二作 観世榮夫演出『子午線の祀り』
 
出演 : 野村萬斎、高橋惠子、嵐 広也、観世榮夫、木場勝己、近石真介、
    
佐藤 輝、 山野史人、大森博史、塩野谷正幸、石橋 祐 他


 2004年(平成16年)12月10日〜28日 世田谷パブリックシアター
 
10日(金)5:00 11日()2:00 12日()2:00 13日(月)5:00 14日(火)2:00
 15日(水)休演  16日(木)5:00 17日(金)5:00 18日()5:00 19日()2:00
 20日(月)2:00 21日(火)2:00 22日(水)休演  23日(木)2:00 24日(金)2:00
 25日()2:00 26日()2:00 27日(月)2:00 28日(火)2:00
 一般前売開始 2004年10月24日  入場料 S席9000円 A席6000円

 2005年(平成17年)1月16日〜30日
 熊本県立劇場  
1月16日()2:00 S席6000円 A席5000円 B席3000円 
 北九州芸術劇場 
1月18日(火)5:00 19日(水)2:00
                 
S席9000円 A席6000円 B席3000円  
 京都・春秋座  
1月22日()3:00 S席前売8000円 A席前売6000円 
 大阪厚生年金会館
1月25日(火)2:00 26日(水)2:00 27日(木)2:00 28日(金)6:00
          29日()1:00 30日()1:00 全席12000円 

 一般前売開始 熊本10月16日、北九州11月13日京都10月27日大阪9月25日

 

【ものがたり】
 歴史上名高い源平の合戦。一の谷の合戦で源義経の奇襲を受け、海へ追い落とされた新中納言知盛は、この時、身代わりに討ち死にした息子・知章を見捨てて逃げ、愛馬を汀へ追い返すという、自ら思いもよらぬ行動を取る。武将となってはじめて自分に対して疑いを抱きつつ、平氏と源氏の和平をはかろうとした知盛は、舞姫・影身の内侍を戦いの終結のために都へ遣わそうとする。満天の星空の下、都で捕虜となっている弟・重衛の思い人である影身の内侍は、都行きを引き受けると同時に、意外にも知盛への想いを打ち明ける。
 ところが、四国屋島に平家を迎えた豪族・阿波民部重能が、帝の三種の神器を楯に主戦論を唱え、和平の使者としての影身を殺してしまう。知盛は平家滅亡を予感しながらも、三種の神器を返せば重衛の命を助けるという後白河法皇の過酷な要求を拒絶し、徹底抗戦の道を選ぶ覚悟を決める。
 一方義経は、弁慶、伊勢三郎義盛らの協力を得て屋島を背後から襲い、平家をふたたび窮地に追いこむ。頼朝から目付けとして遣わされた梶原景時と対立しながらも、義経を先頭に慣れぬ海戦に備えて勢いづく源氏。そしてついに、壇の浦の決戦の日となった―。

【見どころ】
 「平家物語」を題材に、源平の戦いを現代の視点からダイナミックに描いた、昭和を代表する演劇史に残る名作。古典的な物語と近代劇のドラマを見事に調和させた『子午線の祀り』。
 能、狂言、歌舞伎、現代演劇とジャンルを超えたキャスト、スタッフが集結し、それぞれの個性を尊重しつつ見事に融合させた舞台です。独白と俳優全員による合誦とを自在に組み合わせ朗読する「群読」と呼ぶ独特の様式を通し、せりふと語りが鮮やかに共鳴し、あわせて研ぎ澄まされた言葉が持つ荘厳な響きの深さ、美しさを確立した作品です。
 2004年
 12月10日〜28日 世田谷パブリックシアター公演
 木下順二 作『子午線の祀り』


俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』伊勢三郎義盛



          俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』伊勢三郎義盛



俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』伊勢三郎義盛




         
                2004 世田谷パブリックシアター『子午線の祀り』伊勢三郎義盛

   スタッフ
      演  出‥‥‥観世榮夫
      美  術‥‥‥織田音也
      照  明‥‥‥吉井澄雄
      音  楽‥‥‥武満 徹
      音響効果‥‥‥山本泰敬/岩田直行
      技術監督‥‥‥眞野 純
      舞台監督‥‥‥稲葉対介

      琵  琶‥‥‥鶴田錦史
      笛   ‥‥‥赤尾三千子
      演  奏‥‥‥東京コンサーツ

      演出助手‥‥‥遠藤吉博
      美術助手‥‥‥中嶋正留
      照明補 ‥‥‥大平智己(アート・ステージライティング・グループ)
      技術監督助手‥勝 康隆

      照明操作‥‥‥竹内淑子/首藤大善/片山通子/越智達也
      音響操作‥‥‥富田 聡(Raccoon)
      演出部 ‥‥‥首藤美恵/森 正夫/石渡 孝/松井美保/下柳田龍太郎/
             山口英峰/中村太郎/関根好香
      大道具 ‥‥‥俳優座劇場舞台美術部/森島靖明
      衣  装‥‥‥松竹衣装/伊藤静夫
      床  山‥‥‥細野かつら店/細野一郎/穂積 豊/山田康夫

      演出協力‥‥‥岡村春彦/小美濃利明
      制作協力‥‥‥菅井幸雄

      制  作‥‥‥根本晴美
      制作進行‥‥‥西原 栄
      制作助手‥‥‥野林紗恵/相場未江/正木弘美
      公  報‥‥‥森 直子
      営  業‥‥‥清水言一
      票  券‥‥‥金子久美子(ぷれいす)

      企画制作‥‥‥世田谷パブリックシアター
             

   キャスト
      読み手A ‥‥‥‥‥近石 真介
      読み手B ‥‥‥‥‥笠原 拓郎 / 観世 葉子

      人々
      大臣殿宗盛‥‥‥‥観世 榮夫  右衛門督清宗‥‥‥日下 範子
      新中納言知盛‥‥‥野村 萬斎  武蔵守知章‥‥‥‥上滝啓太郎
      修理大夫経盛‥‥‥内山 森彦  能登守教経‥‥‥‥松浦 豊和
      平大納言時忠‥‥‥月崎 晴夫

      二位の尼‥‥‥‥‥前田真里衣  建礼門院‥‥‥‥‥金子 あい
      重衡の北の方‥‥‥江幡 洋子

      影身の内侍‥‥‥‥高橋 惠子

      舞 姫‥‥‥‥‥‥江幡 洋子  舞 姫‥‥‥‥‥‥金子 あい
      舞 姫‥‥‥‥‥‥観世 葉子  舞 姫‥‥‥‥‥‥日下 範子
      舞 姫‥‥‥‥‥‥坂本容志枝  舞 姫‥‥‥‥‥‥仁木 恭子
      舞 姫‥‥‥‥‥‥前田真里衣

      平三左衛門重国‥‥大森 博史  右京亮晴信‥‥‥‥笠原 拓郎
      水主‥‥‥‥‥‥‥観世 榮夫 / 近石 真介

      阿波民部重能‥‥‥木場 勝己

      山鹿兵藤次秀遠‥‥内田潤一郎  松浦の党の者‥‥‥森  一馬
      越中次郎兵衛盛嗣‥篠本 賢一  悪七兵衛景清‥‥‥山野 史人
      三郎左衛門景経‥‥小美濃利明  右筆‥‥‥‥‥‥‥時田 光洋
      
      遠矢の読み手‥‥‥観世 葉子  遠矢の読み手‥‥‥坂本容志枝
      
      九郎判官義経‥‥‥嵐  広也  武蔵坊弁慶‥‥‥‥石橋  祐
      (いせさぶろうよしもり)
      伊勢三郎義盛‥‥‥佐藤  輝  佐藤四郎兵衛忠信‥佐々木梅治

      梶原平三景時‥‥‥塩野谷正幸  梶原源太景季‥‥‥高野 力哉
      梶原平次景高‥‥‥時田 光洋  梶原三郎景家‥‥‥上滝啓太郎

      三浦介義澄‥‥‥‥大森 博史  船所五郎正利‥‥‥おはり万造

      阿藝太郎‥‥‥‥‥内田潤一郎  阿藝次郎‥‥‥‥‥上滝啓太郎
      郎党‥‥‥‥‥‥‥森  一馬




『子午線の祀り』千秋楽・大阪 2005年1月29日
                      

俳優佐藤輝 『子午線の祀り』
近石 真介さん、おはり万造さん、江幡 洋子さんと


俳優佐藤輝 『子午線の祀り』 仁木恭子さん、坂本容志枝さん、塩野谷正幸さん、笠原拓郎さん、観世葉子さんと


俳優佐藤輝 『子午線の祀り』
松浦豊和さん、一人おいて高橋惠子さん、石橋祐さん、野村萬斎さん



『子午線の祀り』壇の浦ツアー 2005年1月17日

      
俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』関門海峡 壇ノ浦
下関側から門司・田野浦方向を見る


俳優佐藤輝 撮影 木下順二『子午線の祀り』 演出観世榮夫さん
壇の浦の潮の流れを見つめる演出・観世榮夫さん


俳優佐藤輝 『子午線の祀り』 関門海峡 壇ノ浦



俳優佐藤輝 『子午線の祀り』伊勢三郎義盛 関門海峡 壇ノ浦
佐藤輝


俳優佐藤輝 撮影 『子午線の祀り』壇ノ浦 赤間神社
赤間神宮で記念撮影




 1999年
 2月3日〜20日 新国立劇場中劇場公演
 木下順二 作『子午線の祀り』

          俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』伊勢三郎義盛
              99 新国立劇場『子午線の祀り』伊勢三郎義盛 以下全撮影・谷古宇正彦


   スタッフ
      演  出‥‥‥観世栄夫
             内山 鶉 / 酒井 誠 / 高瀬精一郎
      美  術‥‥‥織田音也
      照明原案‥‥‥吉井澄雄
      照  明‥‥‥中山 功
      音  楽‥‥‥武満 徹
      音響効果‥‥‥山本泰敬
             岩田直行
      演出助手‥‥‥小牧 游
      舞台監督‥‥‥稲葉対介
             園 良昭

      演 出 部‥‥‥ 佐野佐和子/首藤美恵/加納大資/杉本孝司/畑野 寛
      制作助手‥‥‥高野紀代子

      企  画‥‥‥渡辺浩子
      制  作‥‥‥新国立劇場

   キャスト
      読み手A ‥‥‥‥‥観世 栄夫  読み手B ‥‥‥‥‥笠原 拓郎

      人々
      大臣殿宗盛‥‥‥‥村田吉次郎  右衛門督清宗‥‥‥中村 啓士
      新中納言知盛‥‥‥野村 萬斎  武蔵守知章‥‥‥‥市川喜之助
      修理大夫経盛‥‥‥中村 鶴蔵  能登守教経‥‥‥‥松浦 豊和
      平大納言時忠‥‥‥望月 通治

      二位の尼‥‥‥‥‥深町 稜子  建礼門院‥‥‥‥‥小牧 游
      重衡の北の方‥‥‥望月ゆかり

      舞姫一‥‥‥‥‥‥小牧 游   舞姫二‥‥‥‥‥‥観世 葉子
      舞姫三‥‥‥‥‥‥石原 亜季  舞姫四‥‥‥‥‥‥望月ゆかり
      舞姫五‥‥‥‥‥‥花柳珠千鶴  舞姫六‥‥‥‥‥‥馬渕 真希
      舞姫七‥‥‥‥‥‥平山 裕美

      影身の内侍‥‥‥‥三田 和代

      平三左衛門重国‥‥桐山 里昇  右京亮晴信‥‥‥‥前原 弘道
      水主‥‥‥‥‥‥‥観世 栄夫

      阿波民部重能‥‥‥鈴木 瑞穂

      山鹿兵藤次秀遠‥‥おはり万造  松浦の党の者‥‥‥内田潤一郎
      越中次郎兵衛盛嗣‥篠本 賢一  悪七兵衛景清‥‥‥岡橋 和彦
      三郎左衛門景経‥‥小美濃利明  右筆‥‥‥‥‥‥‥月崎 晴夫
      
      遠矢の読み手‥‥‥観世 葉子  遠矢の読み手‥‥‥石原 亜季
      
      九郎判官義経‥‥‥市川 右近  武蔵坊弁慶‥‥‥‥里居 正美
      伊勢三郎義盛‥‥‥佐藤 輝   佐藤四郎兵衛忠信‥佐々木梅治

      梶原平三景時‥‥‥木場 勝己  梶原源太景季‥‥‥前田 英治
      梶原平次景高‥‥‥山内 榮治  梶原三郎景家‥‥‥黒田 志保

      三浦介義澄‥‥‥‥近石 真介  船所五郎正利‥‥‥大場 健二

      阿藝太郎‥‥‥‥‥梁瀬 龍洋   阿藝次郎‥‥‥‥‥神谷 信弘
      郎党‥‥‥‥‥‥‥内田潤一郎


  俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』伊勢三郎義盛
    左から佐藤 輝、佐々木梅治、里居正美


  俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』伊勢三郎義盛
    左から里居正美、市川右近、佐々木梅治、1人おいて佐藤 輝


         俳優佐藤輝 木下順二 『子午線の祀り』伊勢三郎義盛
          左列下から佐藤 輝、大場健二、里居正美。右列、佐々木梅治、市川右近、木場勝己


  俳優佐藤輝 木下順二『子午線の祀り』伊勢三郎義盛
   左から佐々木梅治、里居正美、鈴木瑞穂、市川右近、佐藤 輝



さようなら、観世榮夫さん

 2007年6月、昨10日にお通夜、今日11日は葬儀告別式が目黒区にある碑文谷会館で行われて、僕も最後のお別れに参列した。
 焼香しながら、お棺に花を入れながら、この34年間の「栄夫ちゃん」との思い出が頭をよぎった。

 『天保十二年のシェイクスピア』公演中、急に大雪となって自動車が走れなくなった日、箱根にゴルフに行っていた観世さんが開演に間に合わず、僕たち出演者が観世さんのセリフを振り分けてことなきをえた。また、観世さんのセリフの間違いがきっかけになって、話があっちに行ったりこっちに行ったり、客席がわいて「観世のじっちゃん、頑張れ ! 」と声が掛かって大受けになったこと。
 その『天保十二年のシェイクスピア』新潟公演の夜、共演していた稲野和子さんの実家の料亭で出演者全員で宴会をしたとき、観世さんが突然幇間(ほうかん = 太鼓持ち)芸を踊りだして、あの強面(こわもて)の観世さんからは想像もつかない、軽妙な踊りにみんながビックリして大喜びしたこと。(たっぷりの元手と観世さんの人生をかけた、すごい芸を見せていただいたことに感謝 ! )
 ブランドものの新しいサングラスをして『紅葉乱舞車達引』の稽古場に来た観世さん。稽古を見ながらそのサングラスをおもちゃにしていたが、そのうちに蔓を曲げはじめ、見る間にぐにゃぐにゃにした揚げ句、使い物にならないほどに壊してしまった。ああ、勿体なかった。(出演者は、稽古よりも観世さんの手元の方が気になっていた)
 渋谷・ジァンジァンでの『冬眠まんざい』。最後に、梁(はり)に縄を吊るして首をかける場面があるのだが、その梁を作るのために、観世さんは当時住んでいた赤坂の自宅から、2メートル以上もある太い竹を、担いで歩いて、渋谷まで持って来られた。作品を創るためには外聞をいとわない、情熱の人だった。
 新国立劇場で『子午線の祀り』を新キャストで公演することになった頃、観世さんと僕は疎遠だった。観世さんは早い時期から、新国立劇場の制作部に「佐藤輝昭を探し出せ、彼の連絡先を調べろ」と指示を出していたと聞いた。
 その顔寄せの時、作品について観世さんが説明していると、作者の木下順二さんが突然話をさえぎって「観世クン、もっと大きな声で ! 」と、注文をだされた。すると観世さんは、まるで演出にダメをだされた新人研究生のように素直に、「はいッ ! 」と返事をされた。このお二人の深くて長い師弟関係を理解できる、ほほえましいできごとだった。

 時代を背負う特に優れた能楽師兄弟として「観世三兄弟」と呼ばれた、長男・寿夫(ひさお)さん、次男・栄夫(ひでお)さん、弟で先代・銕之丞(てつのじょう)さんだった静夫さん。僕はこの「観世三兄弟」皆さんにお世話になり、芸に対する真摯な姿勢と、ものごとに対して毅然と自分の立場を貫く姿勢を教えていただいた。

 能・狂言はもちろん、新劇、映画、オペラなど栄夫さんが活躍された世界の広さを見せて、各界からの参列者があった。
 数十人が和して謡った「見送りの謡」の荘厳な響きの中で、別れを惜しんだ。
 涙雨の中に別れのクラクションを響かせて棺を載せた黒塗りの車が走り出したとき、僕はたまらず「栄夫さ〜んッ!」と大きな声をかけた。

 思えば昨年12月6日、紀伊国屋ホールでの『黒いぬ』に出演していた観世さんを楽屋に訪ね、ご挨拶を交わしたのが生前最後の時間だった。
 『子午線の祀り』の舞台で2メートルもの高さから転落したこともあり、その後のお体のことを心配していたが、そんな影響を感じさせない舞台姿だったので「お元気そうで何よりです」と言うと、観世さんは「元気でもないよ。あっちこっち切ったりつないだりして・・・。」とおっしゃって「あんたの連絡先は変わっていないか?」と尋ねられた。
 その時一緒になった姪の観世葉子さんから、観世さんが入院されていたことを初めて聞いた。今年の正月に、そのお見舞いを兼ねて、連絡先をあらためてお知らせする年賀状をさしあげた。それへのお返事はないままに、栄夫ちゃんは旅立ってしまった。

 栄夫ちゃんは、僕に何か連絡したいことがあったのだろうか。今となってはそれを知ることができない。

                  佐藤 輝 ☆彡 2007.6.11


観世榮夫さん逝去 

 2004年世田谷パブリックシアター公演『子午線の祀り』を演出された観世榮夫(かんぜひでお)さん(79歳)が、2007年6月8日朝、逝去されました。
 心から、ご冥福をお祈り申し上げます。

 1973年に渋谷・西武劇場で公演した井上ひさし作『天保十二年のシェイクスピア』(出口典夫演出、阿部義弘事務所製作)で共演して以来、観世榮夫さんには言葉では言い尽くせぬほどのお世話になりました。

 1977年に僕が結成した劇団動物園に客員メンバーとして参加していただき、旗揚げ公演・ミュージカル『紅葉乱舞車達引』では演出だけでなく、出演もしていただきました。また、多くの貴重な助言を頂戴しました。
 観世さんが語られた「俳優の仕事は日々新しい自分を発見することだ」は、今も俳優としての大切な心構えとなっています。劇団では『ろば』『むかし・まつり』も演出していただきました。
 劇団以外でも渋谷・ジァンジァンでの『冬眠まんざい』、『四谷怪談』、ロックミュージカル『落城』、民音の作家と音楽『水上勉・青江三奈 越後つついし親不知 越前竹人形 五番町夕霧楼』など、観世さん演出の舞台に多数出演させていただきました。

 特に1999年に新国立劇場が製作・公演をした木下順二作『子午線の祀り』では、観世さんの推薦により義経の配下「伊勢三郎義盛」役をいただき、観世榮夫さん単独演出となった2004年の世田谷パブリックシアター公演では、僕の代表作の一つと言われるほどの大好評をいただきました。これは観世榮夫さんが僕の中に育ててくださった「語り」の要素が実を結んだ結果だったと、感謝しております。

 榮夫さん! 安らかにおやすみください。

                  佐藤 輝 ☆彡 2007.6.8



木下順二さん死去
 
 『子午線の祀り』の作者、木下順二さんが先月10月30日に死去されたと、今朝知りました。
 僕が俳優を志したのは、木下順二作『彦市ばなし』の天狗の子役を小学校6年の時に演じ、温かい拍手をもらったのが切っ掛けでした。
 1999年、『子午線の祀り』に伊勢三郎義盛役で初出演することになり、98年8月に新国立劇場のリハーサル室でおこなわれた顔寄せの折に、初めてお目にかかった木下さんにそのことを話すと、木下さんがにっこり喜ばれて「そうか。伊勢三郎義盛も頑張って」と励まして下さいました。その時の先生の優しい表情を思い出します。千秋楽の打ち上げでは、舞台の成果をとても喜んで下さいました。
 次の再演の折にでも、またお目にかかれるものとばかり思っておりましたが、永の別れとなってしまいました。
 俳優・佐藤輝の心を支えてくれた『彦市ばなし』『子午線の祀り』の作者、木下順二先生に心からの感謝を申し上げます。と共に、先生のご冥福を、衷心よりお祈り申し上げます。

                  佐藤 輝 06.11.30 




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