俳優佐藤輝のスペイン紀行 『ラ・マンチャの男』サンチョの『ドン・キホーテ』ガイド-7 バルセロナ

スペイン紀行
サンチョの『ドン・キホーテ』ガイド-7
  

あそびごころの 佐藤 輝の世界
1995年からミュージカル『ラ・マンチャの男』のサンチョ・パンサを
484回演じている俳優・佐藤 輝が案内する心の旅。
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 サンチョのスペイン旅行記『ラ・マンチャ ガイド』 | ミュージカル『ラ・マンチャの男』出演記録


                       文 / 写真 佐藤 輝

 (1)マドリー(マドリード MADRID)

 (2)エスキビアス(Esquivias) エル・トボソ(El Toboso)
  カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)


 (3)カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)
  アルガマシージャ・デ・アルバ(Argamasilla de Alba)
  グラナダ(Granada)


 (4)グラナダ(Granada) コルドバ(Cordoba)

 (5)バルデペーニャス(Valdepenas) アルマグロ(Almagro)
  プエルト・ラピセ(Puerto Lapice)

 (6)コンスエグラ(Consuegra) トレド(Toledo)

 (7)バルセロナ(Barcelona) (セビージャ Sevilla)




(7) バルセロナ(Barcelona) (セビージャ Sevilla)

 
 マドリー(マドリード)から飛行機で70分、カタルーニャ地方の中心地バルセロナ(Barcelona)に飛んだ。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ 飛行機から眺めるバルセロナ市街。地中海の深い碧が印象的だ。



 市の中心カタルーニャ広場から南へ、並木の遊歩道ランブラス通りを市民の胃袋を満たすサン・ジョセップ市場(地元ではボケリア市場と呼ぶ)に立ち寄って美しく並べられた新鮮な食材と買い出しの庶民のエネルギーを眺めたりしながら南下する。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、サン・ジョセップ市場(ボケリア)
庶民の生活に直結する市場は、新鮮な魚、肉、野菜、果物とエネルギーにあふれている。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチヨ 佐藤輝 バルセロナ、ラ・ボケリア市場
ああっ、ハモン・セラーノ(生ハム)がこんなにいっぱい!



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチヨ ラ・ボケリア市場
ドライ・フルーツの店。見るもの、全部を味わいたい!



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ・パンサ バルセロナ、ボケリア市場
醤油と、わさびと、鍋、包丁を持ってくれば良かった。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、ランブラス通り
ランブラス通り。大きな通りの真ん中が人専用、小鳥屋、花屋が並ぶプラタナスの並木道。その外側に車道がある。



 ミロのモザイク舗装もある遊歩道の両側にはキオスクと花屋と小鳥屋が並び、その間では大道芸が行われている楽しい通りを1500メートル。港の手前の広場に突き当たる。


 このポルタール・デ・ラ・パウ広場にはライオンが並ぶ台座から円柱を高々と60メートル見上げた塔のてっぺんに、新大陸を発見したコロンブスが右手で地中海を指さしている銅像が立っている。
 1492年に新大陸を発見してスペインに帰ったコロンブスが女王イサベルに謁見し新大陸発見の報告をしたのもここバルセロナ。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ港 コロンブス像 港に面したポルタール・デ・ラ・パウ広場に立つコロンブス銅像。



 そこから港を回るようにして東へ向かえば2kmたらずで海岸に出る。そのあたり一帯がバルセロネータ海岸だ。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、バルセロネータ海岸
バルセロネータ海岸。レストラン、モダンな建物が多い。



 昔は道端で魚介類を焼いて売っている漁村だったそうだが、1992年のオリンピックの時に整備されて、今はウッド・デッキの遊歩道が続き、夏には海水浴客でにぎわう市民の憩いの砂浜が延びている。


 日差しの加減でコバルトブルーが濃く淡く輝く、地中海を眺めた。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、バルセロネータ海岸 地中海



 セルバンテスもこのあたりに立って地中海と砂浜を眺めたことがあったに違いない。
 この砂浜でドン・キホーテは戦いに敗れて、サンチョ・パンサと共にラ・マンチャに帰ることになった。その場面を書きながら、セルバンテスの胸にはどんな思いが去来していたのだろうか。


 そんな想像をしながらいたる所で遊び心を刺激してくれる市内を回った。


 陽が射すとぐんと暖かくなってコートを脱ぐ。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、グエル公園
グエル公園。ここにも、そこにも、こんな所にも、ガウディーの遊び心があふれている。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、ガウディーのグエル公園
入り口から直ぐの大階段途中にあるトカゲの噴水。小さな置物かと思っていたら、こんなに大きかったんだ。



 サグラダ・ファミリア(聖家族)教会やグエル公園、カサ・ミラに代表されるアントニオ・ガウディの建造物、モデル・ニスモは遊び心にあふれ想像力をかき立ててくれる。計算と表現の妙。こんな風にサンチョを表現出来たら面白いな、などと思う。



      俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、ガウディーの聖家族教会サグラダ・ファミリア
      サグラダ・ファミリア(聖家族)教会。



 サグラダ・ファミリア塔内の人一人通れるだけの細く急ならせん階段を登る。舞台の階段の上り下りのトレーニングだ。
 雨の吹き込みを防ぐために斜め下向きに穿たれた窓は、高い塔が海からの強風を受けても壊れないよう、空洞になっている。その窓穴や塔と塔をつなぐ渡り廊下から見る町の眺めが良い。地中海も暖かな春霞のベールでおおわれている。




      俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、サグラダ・ファミリア



 今も工事が進んでいるから塔の上にはクレーンが並び、中に入るとヘルメットをかぶった作業員が行き来し石を削るグラインダーの音が響く。足音をしのばせながら見学する荘厳な大聖堂とは違い、ここは工事中の遊園地を見学している気分になる。
 1883年に起工して122年たったが、完成までもう200年かかると言われている。でも、3年ぶりに見た堂内は、初めて見るステンドグラスが朝日を透して鮮やかな色の光があふれ、随分と工事が進んでいるように見える。



      俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、サグラダ・ファミリアのステンドグラス




俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、カサ・ミラ
ガウディー作のマンション、カサ・ミラ。普通に住人が生活している。



俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチヨ バルセロナ、カサ・ミラ
カサ・ミラの屋上。換気塔がこった作り。遠くにサグラダ・ファミリア教会が見える。



      俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ バルセロナ、カサ・バトジョ
        
カサ・バトジョ。



 大聖堂に向かう途中、洒落たブティックが並ぶポルタル・デ・アンヘル通りで大きな本屋を見つけて立ち寄った。
 入り口には話題の新刊が山積みされているが、何と一番大きな山は出版400年を記念して王立アカデミーなどが編纂した厚さ6,7センチほどもある定価9.5エウロ(EURO)の『Don Quijote de La Mancha』。子供向けの絵本や当時の料理について書かれた本まで何種類もの『ドン・キホーテ』の山。
 出版400年を記念する多くの事業が準備されていると聞いていたが、『ドン・キホーテ』関係の出版もその一環なのだ。


 そうか、キホーテをバルセロナまで旅をさせた始まりは「バルセロナを舞台に書けばバルセロナでも本が売れる」と単に金もうけを企んだ出版社の提案だったかも知れないと思いついた。
 そう言えば日本にも、弥次さん喜多さんが旅をする『東海道中膝栗毛』が大ヒットして、次に蝦夷やみちのくを、そのまた次は山陽、四国路を旅する続編、続々編が出された、人気に乗った出版があった。


 いや、しかし待てよ・・・、最晩年にさしかかったセルバンテスがそんな単純なはずがない。それに乗ったように見せながらも実は自分個人の何らかの思いをそこに込めたのではないだろうか。
 何か大きな意味が隠されているような気がする。


 バルセロナで強く感じる遊び心。
 カタルーニャは天才チェリストのカザルスや画家のミロ、サルバドール・ダリ、建築家のガウディが生まれ、ピカソが青春時代を過ごした土地。この芸術家たちに共通する自由な個性を受け入れ育てる気風を持っている。
 自由を求めて独裁に抵抗したピカソ、カザルスの精神は、自由独立の気風を持ったカタルーニャの伝統を引き継いでいる。


 その気風はセルバンテスがバルセロナを訪れた当時にもあって、それに魅力を感じていたセルバンテスがドン・キホーテをバルセロナに旅させたのではないだろうか。そうに違いない。
 一方、キホーテの敗北のヒントは、さっき見た港に建つコロンブス像が指さしている海の彼方、新大陸だ。僕にはセルバンテスの見果てぬ夢を描いているのだと思える。


 以前、セビージャ(セビリヤ)のインディアス公文書館を訪ね新大陸に職を求めたセルバンテスの手紙のコピーを頂いたことがあるが、結局この希望は叶えられなかった訳で、僕には夢をくじかれた彼の姿が、コロンブスが新大陸発見の報告をしたバルセロナの砂浜で戦いに敗れたドン・キホーテの姿に重なって見えてきた。



俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ 佐藤輝 セルバンテスの手紙 『インディアス公文書館』から頂いたセルバンテスの手紙のコピー。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ セビージャ(セビリア)、インディアス古文書館
セビージャ『インディアス公文書館』前にて。
1997年1月、セビージャにある、スペインのアメリカ大陸植民地関係古文書を集めた資料館『インディアス公文書館(el Archivo de Indias)』を訪ねて資料を閲覧。『ラ・マンチャの男』のチラシを渡し「ハポンのサンチョです。セルバンテスについて調べに来た」と挨拶した。そのお返しに新大陸に職を求めたセルバンテスの手紙のコピーを特別に貰うことが出来た。それをコピーして幸四郎さんにもプレゼントした。



 セルバンテスが新大陸に抱いた夢は生前には実現しなかったものの、死後349年たった1965年、新大陸のニューヨークでセルバンテスとドン・キホーテを主人公にしたミュージカル『ラ・マンチャの男 Man of La Mancha』が大成功を収めた。
 この『ラ・マンチャの男』の大成功こそが、セルバンテスが新大陸に抱いた夢の実現ではなかったか。


 その後1969年から日本でも松本幸四郎さん主演で公演され、上演回数1000回を越す人気だ。セルバンテスがまいた夢の種『ドン・キホーテ』は着実に成長し、今も次々と花を開いている。



俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチヨ バルセロナ、バルセロネータ海岸 地中海
バルセロナ、バルセロネータ海岸。あの船はどこへ行くのだろうか・・・。



 バルセロネータのコバルトの海を眺めながら、400年後に豊かな実を結ぶ夢もあると思えた。
                          (2005.3.13)           







俳優佐藤輝 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチヨ 帝劇カーテンコール 2005.6.29帝国劇場『ラ・マンチャの男』千秋楽 写真提供・東宝


 




                 ☆彡



 この文章は、2005年5月の名古屋・名鉄ホール、6月帝国劇場『ラ・マンチャの男』公演プログラムに掲載されたものに、字数の関係で割愛した文章を加えたものです。

 10年にわたってサンチョを演じている僕にとって、スペイン、ラ・マンチャ地方は第二の故郷です。

 今回、マドリーからラ・マンチャ地方、アンダルシア地方を回ったレンタカーの走行距離は1328Kmでした。
 ちなみに過去5回のスペイン旅行で自分が運転して走ったレンタカー走行距離を計算してみた。
 1994年、サラマンカ、セゴビア、チンチョン、サント・ドミンゴ・デ・シュロス、トレドをバスで訪ね、レンタカーではマドリーからラ・マンチャ地方(カンポ・デ・クリプターナ、エル・トボソ、デルモンテ、アルガマシージャ・デ・アルバ、アルマグロ、コンスエグラ)中心に615km。
 97年には飛行機とバスでセビージャからコルドバ、グラナダを回り、一度帰ってマドリーからラ・マンチャ地方をレンタカーで訪ねる予定だったが、グラナダのホテルでパスポートからホテルバウチャー、国際免許証まで貴重品の盗難にあい、レンタカー移動を断念。以降は飛行機、列車、タクシーで移動した。当初予定していたカンポ・デ・クリプターナ、プエルト・ラピセを訪ねた。警察でタクシーの手配の仕方を尋ねたら、遠方から呼んでくれたのには驚いた。
 3回目99年にはマドリーからラ・マンチャ地方(エスキビアス、エル・トボソ、カンポ・デ・クリプターナ、サンタクルス・デ・ムデラ、アルマグロ)、コルドバ、セビージャをレンタカーで回った。走行距離1444km。
 2000年はバルセロナに入り飛行機でマドリーへ。そこからレンタカーでラ・マンチャ地方(エスキビアス、カンポ・デ・クリプターナ、アルマグロ、コンスエグラ、トレド)、コルドバ、セビージャを往復して1372km。
 2002年。マドリーから西へ走り刺繍で知られるラガルテラ村、もどってエスキビアス、カンポ・デ・クリプターナ、エル・トボソ、アルマグロ、トレドと993km。
 6回の旅行で合計5752km走った。

 本文には登場していませんが、1994年に初めてスペインを訪ねた時に奇跡的に出会い、以後スペインへ帰省するたびにお世話になっているマドリー在住の光林周三さんの精神的な支えが、今まで6回のスペイン旅行を実のある素晴らしいものにして下さいました。
 心から感謝申し上げます。

                   佐藤 輝   (2005.8.27)






 (1)マドリー(マドリード MADRID)

 (2)エスキビアス(Esquivias) エル・トボソ(El Toboso)
  カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)


 (3)カンポ・デ・クリプターナ(Campo de Criptana)
  アルガマシージャ・デ・アルバ(Argamasilla de Alba)
  グラナダ(Granada)


 (4)グラナダ(Granada) コルドバ(Cordoba)

 (5)バルデペーニャス(Valdepenas) アルマグロ(Almagro)
  プエルト・ラピセ(Puerto Lapice)

 (6)コンスエグラ(Consuegra) トレド(Toledo)

 (7)バルセロナ(Barcelona) (セビージャ Sevilla)



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