俳優佐藤輝エッセイ「季語のある日々」12.26一陽来復
佐藤輝のエッセイ「季語のある日々」
2006年4月から2007年3月まで1年間にわたって山形新聞に連載。

2006年4月4日 ベランダは山形に地続き 4月18日 サンチョの生みの親-(上) 5月2日 サンチョの生みの親-(下)
5月16日 草笛を吹いたころ 5月30日 もみじ若葉の小倉山 6月13日 蒼き雨降る梅雨の入り
6月27日 二人のテルアキ 7月11日 星に願いを 7月25日 アクア・スプラッシュ 8月8日 夏の故郷
8月22日 夏草や・・・ 9月5日 一期一会の虫の夜 9月19日 高きに登る 10月3日 歳時記 10月17日 美しい日本 
10月31日 再生 11月14日 俳優への第一歩 11月28日 捨てる神あれば・・・ 12月12日 山茶花の散るや・・・
12月26日 一陽来復 
2007年1月9日 演劇の神様 1月23日 見果てぬ夢 2月6日 寒い朝 2月20日 暖冬に思う、寒さかな
    
3月6日 ハポンのサンチョ 3月20日 卒業


    2006.12.26掲載 一陽来復
     
 一陽来復

               佐藤 輝

 冬至には、カボチャ、小豆、もち米を煮た「いとこ煮」を食べた。冷めてもうまい。
 トレーニングを終えて、マッサージプールで体をほぐす。このプールでは冬のこの時期、僕の好きな現象が見られる。一人、ひそかに楽しんでいる。
 プールの壁から「ふくらはぎ」「太もも」「腰・おしり」「背中」、底から「足裏」、上から「肩」とそれぞれ、体の場所に合うように勢い良くジェット水流が吹きだしている。その水流に含まれる小さな空気の粒がはじけると、水面に無数の小さな小さな水玉が飛びだして、高さ10センチほどの放物線を描く。が、普段は見えない。この時期の晴れた日、素通しガラスの高窓から、ちょうど良い角度で午後の日光が差し込み、斜めにこの水面を照らす。その時、その水面を逆光で見ると、幾千、いや幾万もの小さな水玉の放物線が絶え間なく光っては消えるファンタジー。しばし見とれるその太陽と水がつくる美しい小さな世界は、僕の心を優しくマッサージしてくれる。来年も良いことがありそうな、幸せな気持ちになる。
 俳優人生の充実した2年を思い出した。
 1967年は、松竹大船撮影所専属となり山田洋次監督作品に出演したり、テレビ映画の助監督をしたり、訳あって紆余(うよ)曲折。
 劇団俳優小劇場の俳優養成所に入ったのは翌68年。その劇団には、高校時代に酒田日活で見た今村昌平監督の映画に多く出演していて、僕が好きになった小沢昭一さんと、僕を評価してくれた演出振付家・関矢幸雄さんが所属していた。
 この劇団は当時最も注目され、ユニークで盛んな活動をしていた。率いていたのは演出家・早野寿郎さん。明晰(めいせき)な彼は俳優教育に定評があり、頭脳と体を使う知的な演技論で我々を指導した。
 僕は早野さんの指導で一気に開花、評価され、研究公演では主役に抜擢された。毎日稽古(けいこ)場に入り浸っては芝居の稽古、バレーと歌の特訓を受け、終れば夜遅くまで仲間と演劇論を交わした。毎日が新鮮で、やること、見ること、聞くことが全部自分の感覚と血になっている気がした。
 テレビ出演も増えていたが、翌69年、養成所を卒業して劇団メンバーに選ばれてすぐに、初のレギュラー出演が決まった。杉良太郎さんと九重佑三子さん主演の日本テレビ「若すぎる二人」、8回連続の1時間ドラマ。僕は九重さんの弟役で、父親が佐野周二さん、母親が葦原邦子さん、お祖母ちゃんが飯田蝶子さんという豪華な配役だった。スケジュールを縫いながら「パンとあこがれ」「安ベエの海」など次々とレギュラー出演が続き、加えて舞台の劇団本公演が2本、研究公演、それに外部出演もあり、1年で13本もの芝居に出た。多忙で充実した1年となった。
 新宿・紀伊国屋ホールで公演した関矢さん構成・演出・振付の「日と火と碑と人」にも抜擢され、この演技で「劇団俳優小劇場に佐藤あり」の印象が広まった。そしてミュージカル初出演。尾藤イサオ主演、関矢さん振付の労音ミュージカル「だから ! 青春」全国100公演へと続く。秋田から出稼ぎに行く農家の長男を、思いっきり楽しく演じた。同じこの年に、僕が26年後に出演することになるミュージカル「ラ・マンチャの男」が、帝劇で日本初演された。
 暮れる今年も、思い出多い年となった。来年がさらに実りある年になることを願っている。

  ラ・マンチャや枯野の果ての大落暉(らっき) 輝

俳優佐藤輝 撮影 ミュージカル『ラ・マンチャの男』サンチョ・パンサ
写真タイトル
「ラ・マンチャの男」の舞台、スペインカンポ・デ・クリプターナの風車と夕日(筆者撮影)

          2006.12.26 掲載分



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